環世界

ただのメモです

【論文】Webb, M.(2019) "Seeking signs of transparency"

Webb, Martin

 2019 Seeking signs of transparency: Audit, Materiality, and Monuments to Active Citizenship in New Delhi. Journal of Royal Anthropological Institute 25(4): 698-720.

 

要旨:

 ニューデリーでは、情報委員長(Chief Information Comissioner)が市議会議員に対し、公共事業に費やされた金額の詳細を、市内の各地域に設置されたヒンディ語掲示板を通して「積極的に開示」するよう命令した。一般住民にまで届くように設計された「適切な」技術としてのこの掲示板は、市政への市民的関与を発展させ、民主化させる進行中の技術倫理プロジェクト(technomoral project)の一部である。情報委員会の役人と「情報への権利」活動家が実施した掲示板についての監査では、多くの掲示板が不適切な位置に設置されていたり、不適切な素材で組み立てられていたりすることが明らかになった。そのため掲示板は、さらにオープンで透明性の高い都市行政を予示せんとするプロジェクトにおける、信頼できないアクタントであると判断された。だが、掲示物の物質的かつ時間的な志向性を焦点化すると、それは別の意味で生産的であることが明らかになる。我々は掲示板を、アクティブな市民活動の初期の取り組みのモニュメントとして、またそれらの監査や是正に関わるアクター間における競合や共同作業が進行する場として理解するようになった。

 

ひとことメモ:

 デリー市内に設置されたヒンディ語掲示板をその物質性に着目して論じる論文。オーディット・カルチャーの文脈では、文書のマテリアリティは論じられてきたものの(e.g. StrathernやRiles )、それを提げる掲示板には着目されていないという指摘は面白い。ただ後半は事例報告にとどまっていて、もう少し踏み込みが欲しかった気もする。

 

https://rai.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/1467-9655.13129